2011年12月15日木曜日

オリンパス:歴代社長に報告書…財務担当のPCに「物証」

オリンパスの損失隠し問題の調査にあたった同社の第三者委員会(委員長・甲斐中辰夫弁護士)は歴代3社長の関与を認定したが、その根拠には複数の「物証」があった。このうち同社財務部担当者の保有するパソコンから見つかった「定期報告書」には、国内外のファンドで管理されていた含み損の状況が一覧で記載され、歴代社長の名が宛先として連記されていた。【鈴木一生、島田信幸】
 6日公表された第三者委の報告書は、84年以降に社長を務めた下山敏郎元会長(87)、岸本正寿元会長(75)、菊川剛前会長(70)の了承の下、山田秀雄前常勤監査役(66)と森久志前副社長(54)を中心に損失隠しが進められたと指摘。この5人と、90年から約11年間にわたり経理部長を務めた元常勤監査役の計6人が実態を把握していたと認定した。
 報告書によると、菊川前会長が社長に就任した01年6月以降、年2回の割合で、岸本元会長、菊川前会長、元常勤監査役が参加する極秘会議が開かれた。定期報告書はこの会議でその都度示され、03年9月作成の「135PB 運用報告」と題された書面には「下山取締役殿」「岸本会長殿」「菊川社長殿」などの宛名を連記。「預金」「債券」「投資信託」「出資金」の勘定科目ごとに、「残高」と「含み損益」の数字が記され、「対前期比」も示されていた。
 これは裏帳簿を基に、ファンドにおける含み損を定期的に確認したものとされ、当時、非常勤取締役に退いていた下山元会長にも、山田前監査役らから別途、個別に報告されていた。裏帳簿は調査では見つかっておらず、定期報告書は歴代社長らへの報告後に廃棄処分されていたという。第三者委は、山田前監査役らの指示で定期報告書を作成した同社財務部の担当者のパソコンから現物を発見した。
 このほか、損失隠しの枠組みに関わった外国銀行との契約書からは、岸本元会長と菊川前会長の署名も見つかったという。
 オリンパスの損失額は99年に960億円だったが、03年には1177億円まで拡大。06~08年の英医療機器メーカーと国内ベンチャー3社の買収などで捻出した1348億円で穴埋めしていた。
 下山、岸本両元会長は第三者委に関与を否定し、菊川前会長も「損失額は最近知った」などと釈明しているとされるが、実行役だった山田前監査役と森前副社長は歴代社長への報告を認めた上で「(不正を続けてきて)苦しかった。(発覚して)ほっとした」と話しているという。

 ◇歴代社長らの発言◇

 岸本元会長と菊川前会長は山田前監査役らとのやりとりの中で損失隠しを認識している発言をしていた。第三者委が報告書に記載した主な発言は以下の通り。
「市場が回復すれば損失も減り挽回することができるはずだから待つ」(岸本元会長が90年代中ごろ以降、山田前監査役から損失公表を提案され)
「どうだ、全部消せるか」「これで終わるといいな」(菊川前会長が08年9月ごろ、山田前監査役らから損失解消スキームについて報告を受け)
毎日新聞 2011年12月7日 15時04分

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